4 「ディスタンクシオン」を読む
『ディスタンクシオン』を導きの糸として、私達に現在ブルデューのこの幾何学のアプローチを批評させてほしい。
4.1 『ディスタンクシオン』のフレームモデル。
「三次元のスペース」(ディスタンクシオン、原著p128 訳注:第二章「社会空間とその変貌」「三次元空間」普及版 p178)という表題が付けられる章で、ブルデューは、有名な概要図において表示されたライフスタイルに関連した知識を説明する。 図5,6\(原著 p.140-141\)を見て欲しい(訳注:普及版p208−209での図5 社会的位置空間、図6 生活様式空間)。 『ディスタンクシオン』のいわゆるフレームモデルは、この図の根底にある数学的な(多次元の幾何学的)モデルである。個人は3つの根本的な次元により特徴付けられている:経済的、文化的、そして社会的な資本\(原著p138\)普及版p205の最後)である;そして、 個人(上流、中間層、および大衆階級をまとめて)の全体のクラウドが資本の量と資本の構造を2つの主要な軸とした空間に配置される。
4.2 解釈への補助
「ディスタンクシオン」を注意深く読むと、ブルデューが広範囲かつ賢明に、70年代初頭の幾何学的データ解析を解釈の補助として用いていたことがわかる。第一に、主軸の慣性(原著p295(普及版p530)にあるようにパーセントで表現されている)に、第二にポイントの軸への寄与(p295の脚注4(普及版p530の注4:数字は、絶対的寄与率である、という説明))として、である。
4.3 同時表示
『ディスタンクシオン』において、 ライフスタイルについての調査において実施された2つの対応分析が示されている:一つは、上流階級についてのものでもう一つは中流階級についてのものである。同時表示が、これらの分析を実証するために常に用いられている。例えば、例えば、上流階級についての図13\(p296、普及版536\)は、p531の2つのグラフの同時表示になっている:プロパティに対する図11、異なる社会階級集団の個人に対する図12(これらの社会集団social fractionについては後ほど、議論することにする)である。 書籍では、ポイントの2つの種類はを別々の色で表現している(黒と赤);1976年当時の「原文」の時には、同時表現は、透明な書類を重ね合わせて実現されていた!
4.4 追加設問(Supplementary questions)
『ディスタンクシオン』の対応分析において、地位的変数(年齢、父親の職業、教育レベル、収入)は追加要素として(社会的グループを除き)はずされている。つまり、それらは、社会空間の構築には寄与しない。しかし、社会空間ににおいてはポイントとして位置している。ブルデューは、これは、ライフスタイルにおける相違は、地位の言葉に置き換えることを示すにあたって、完全な強さを与えていると、指摘している。このことは、CAを単なる「説明の手順」とする誤解に対抗して、CAの利用についての説明を意図していることを意味している。
4.5 具体的な分析
階級間のホモロジー(相同性)のアイデアに基づいて、ブルデューは上流階級と中流階級の相同な部分雲を比較している。 図3(図13と17?)\(p300と394、普及版 図13 p536 図17 p664\) を見て欲しい。ここにおいて、例えば、第1軸と第3軸の教育レベルプロファイルは、二つの階級に対して引かれている。
4.6 個体空間の構造因子
最後に、『ディスタンクシオン』において、ブルデューは、 現在私達が 個体空間の「構造因子」(structuring factors1)と呼ぶものを利用する。 再び上流階級の図11,12(「支配階級のヴァリアント」普及版p531)をみてほしい。 個々の社会的グループにとっての幾何学的輪郭は、その内において、この部分に所属している個人のほとんどが集中される範囲を示す。つまり、図の左側では、傾いた長方形は、高等教育教授(「professeurs s upérieurs」)と芸術製作者の領域を示している。;図の中心的なところでは、上級技術者、自由業の長方形がある(「professions libérales」);右側には、商業経営者(「後援者du商業」)などの上に三角形がある。 公的および民間部門(cadres du public'' andcadresdu privé’’)のエグゼクティブのための輪郭はまったく引かれていない。 なぜなら、ブルデューが私達に脚注\(p297\)(普及版注6)で言うように、個人は平面全体にわたって散乱しているからである。 様々な社会的グループ(subclouds)に対する量における、そして、方向(形)における分散を素描したものであることは明白で、そのような輪郭線が、これらのサブクラウドが様式化されたもの(それは印刷上の必要におそらく動機付けられている)である。そのような様々な個人のサブクラウドの様式化された表現は、グラフィック・ソフトによって、集中楕円(concentration ellipses)によって、便利に提供される。
『ディスタンクシオン』のテキストを吟味すれば、ブルデューが、社会的グループ(fraction)を、追加変数(modalities)のセットとしてよりも、個人を構造化する因子として考えていることを発見する。一例としては、上流階級にとっての、三つのグループ(fraction)である「専門職」professions libérales、「公務員管理職」cadres du public、「民間企業管理職?」cadres du privéである。 見たところ、これら三つのクラウドの平均ポイントは、図の中心に近くそれぞれ中心に近い。従って、もし社会的グループ(fractions)をサプリメント要素として置いているのであれば、これらの三つの部分(fractions)は、(空間プロパティの中で)中心周りの三つのポイントによって単に近くに表象されているにすぎないし、サブクラウド間での(個人空間の中での)分散の相違は、捕捉されないことになる。そうして、社会グループ(fractions)を、個人の構造化要因としての概念化すること、そして、対応するサブクラスドを素描することは、翻って、そのライフスタイルにおける差異をデモンストレーションすること対するすべての重要な細部は、社会的グループ(fractions)の用語で翻訳できるのである。
4.7 個体、常に個体 !
Benzécriがどこかで書いている「全体的にみて、対応分析は行列を対角化するだけである。ポイントは、正しい行列の対角化を行うかどうかだ」と。ブルデューが対応分析を一定に使用した方法は、基本行列として典型的な「個人\(\times\)変数」表で、それは、変数のセットは関連するすべての設問のすべてのセットであり、それゆえ二つのクラウドを適切に「多次元」表示するのに典型的に十分なものであった(このことは、ベンゼクリの有名な要請「徹底的であること」、Benzécri, 1992, p.383に近い考え方である2)。
全体の情報を運び出す個体の基本クラウドから、社会グループ(fraction)の平均ポイントのクラウドのような派生クラウド(derived clouds)が常に得らる。CAに入力される総合されたデータと逆に、ブルデュー的センスでの社会空間の概念に対立し、変数の社会学のためのCAの積み重ねの様相を呈してくる。
個体それ自身への関心は、個体が大学教授である「ホモ・アカデミクス」のように既知の人々である場合には、十分明らかである。多くの調査におけるように個体が「匿名」である場合には、その表示への興味はそれほど明確ではない。
「ディスタンクシオン」を読むことで提示されるのは、(社会グループ(fraction)のような)重要な構造化因子を扱う時はいつでも、平均ポイントに限定せず、(社会グループ(fraction)のような)因子レベルの個人の間の変位性にアクセスすることが強く推奨されているということである。すなわち、サブクラウドそれ自体は、表示されるか、すくなくとも、分散の主要な報告の量の素描を情報豊かに要約する。
ブルデューの「ハビトゥス」概念-個人に付与された恒久的な性向(disposition)-のように、社会空間における個人の位置と(嗜好、申し立て、などの)様々な観察された表明との間の結び付きを(it?)確立する。 今や、社会空間における位置がこれらの表明全体を決定しないにもかかわらず、それらは、その確率(ラプラスが言ったように、それらの状態)によって確実に統制されている。 もし、我々が、ブルデューを正しく理解するのであれば、確率のように、ハビトゥスは、個人と集団の二つが畳みこまれた概念である。この線が導くであろうことは、慎重に選ばれた状況で、回帰分析(とりわけ「ロジスティック回帰分析」)によって生成された個人の確率は、幾何学的フレームワーク内のハビトゥスの調査への繋がっていく。