3 「ディスタンクシオン」に学ぶ
3.1 親和力\(Wahlverwandtschaften[^4]\)
ブルデューの社会学的思考と幾何学データ解析の間の特別の結び付きを分析する前に、もしブルデューが従来からの統計技法である〈回帰分析〉を使うことを差し控えるというのであれば、それは不案内によるものではないことをは確かである、ということは表明しておきたい。
Le Métier de Sociologue1のドイツ語版の前書きにおいて彼は次のように書いている。
「もし私が、様々な学校の生徒の成績について、何が決定\(bestimmen\)要因であるかを説明することを求められたなら、私は重回帰分析を使っただろう。」
しかし、条件は満たされなかった。そうして、ブルデューは回帰分析を使わなかった。『ディスタンクシオン』にある多くのフレーズで、ブルデューはこの気乗り薄の理由を説明している。回帰分析のような手続はブルデューが強く反対する傾向にある変数の社会学と同類なのである。 従属変数(政治的な意見)と性別、年齢、宗教などのいわゆる独立変数の間の特定の関係は、こういうものの相互関係に記録された効果に特有な権力と形態という真実の原則を作る関係の完全なシステムを偽り隠す傾向がある(『ディスタンクシオン』、普及版p176(原著p114、英語版 p97 Routledge Classic版)。 note: 同様な引用はほかにも確認できる。(例えばページ11、113、117…★これは原著ページ?)
3.2 社会の空間的展望からデータの空間表現へ
社会の空間的展望(社会空間、ということ?)。ブルデューの思考と幾何学的データ解析の間の結び付きがどれほど強いものかを理解するために、-それが真に親和的(Wahlverwandtschaften)だと言えるので、まず、ブルデューの考察において一貫している社会(Raumvorstellung)の「空間のビジョン」から始めよう。
この空間的ビジョンは、彼を、私達を取り囲んでいる物理的空間における社会関係の物質的なサポートを暴き出し強調する。19世紀のパリの市街地図は、フロベールの「感傷教育」の分析のガイドであり(訳注:ブルデューがフロベールについてふれた著作を確認すること)、それはちょうどある地域(郊外の大規模なセット)、今日では、貧しい人たちが生活するところが「世界の悲惨 La Misère du Monde」(ブルデューの著作)のガイドになっている。 あわせて、「世界の悲惨」においてたぶん私達が、「撮影効果」(Effets de Lieu’’ (Effects of location))という表題を付けられる章(探す)のブルデューの空間的展望の中で最も完全な博覧会なのだということにと気付く。ブルデューにとって、社会的な関係と対立は、何よりもまず空間的な関係と対立なのである。
3.3 データの空間表現
ブルデューにこの空間的ビジョンがあったために、調査と調査票の分析において、彼が選択したのが、個体間の差異、分散、独特の特性がが空間的用語\[Raumdarstellung\]で投入されうる対応分析の幾何学的方法と呼ばれるものであったということである。 ブルデューにとって 対応分析(CA)は、他の「データ視覚化」ツールと同列の単なるお手軽なツールではなかった。ブルデューは、複雑な統計的関係から始めてCAは二つの空間的関係(一方に、物理的空間のアナロジーで個体が位置し(ブルデューは「個人空間」と呼んでいる)、他方に個人空間と同時に提示される、社会関係(プロパティ空間)を表現する複雑な統計的関係を表示)を、構築、検討する唯一の道具(tool と対比させてinstruments)であるということを明確に理解している。
「私は対応分析をとてもよく使う。なぜなら、その哲学が本質的に私が考える社会的な現実を構成しているものを完全に表現する関係の手続であると思うからである。それは、私が「界の概念」によって行なうのと同じように、この手順は関係を『考え』るのである。」 (Le Métier de Sociologue(『社会学者のメチエ』)、1991年ドイツの版の序文)。
『社会学者のメチエ』↩︎